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談合天国の記事について

統計が暴いた10年前の談合天国・日本 | SciencePortal

 

この記事を読んでの雑感をまとめてみます。

 

 

記事の趣旨は、

 

国土交通省の旧建設省部局が03~06年に全国で発注した工事すべての入札結果4万件のうち、再度入札になった2割弱について分析した。初回の入札で1位と2位の差が小さいほど逆転の可能性が高いはずなのに、初回1位の業者が再度入札でも、再び1位になる割合は97.5%にも上っていた。

 

 というもの。

こちらの感想を述べる前にまず基礎知識をまとめてみます。

 

入札方式について

こちらの記事で話題に上がっているはいわゆる価格競争方式です。

工事に対して参加表明を行う業者がいて、そのうちもっとも安い金額を提示したものと契約するという方式。

ちなみに現在では、技術力と価格を総合的に評価する総合評価方式が主流です。

 

予定価格について

予定価格とは、ざっくりというと発注者側(記事の中では国交省建設部局)が

「この工事だとこれくらいの価格なら標準的な工法でできるよね?」

 

と見積もった金額です。つまりこの予定価格を超えた金額を提示する業者とは

「高すぎる。契約しない!」といえるわけです。

 

 

 

ではこの前提のもと、記事のケースについて考えてみましょう。

 

まずは談合があるとした場合、以下のケースが考えられると思います。

a)官製談合である

発注者が予定価格を業者に裏で漏らしている。

b)業者間のみの談合である

参加表明者同士が横でつながっており、入札価格をもらしている

 

 

 

これら事例がa)である可能性は低いです。

なぜなら入札時に参加者全員が予定価格より高い金額で金額を提示しているからです。

たとえば、予定価格が1000万円の工事で参加表明者全員がその価格を知っていた場合、あらかじめ談合により決められた業者Aが極端な値だと999万円で入札、そのほか業者は予定価格を超えた金額で入札すればよい話です。

 

「一発で入札して決まるなんて、客観的に見て怪しいから、わざと一度予定価格より高い金額で入札するんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかしながら、初回に入札価格を超えた金額で入札することにはリスクがあります。

それは「よこどり」がありえるからです。

 

 

たとえば、前の例と同じく予定価格が1000万円として

業者A 1010万円

業者B 1020万円 

業者C 1030万円

と金額提示したとします。

 

このとき、「談合に参加していない」業者Dが

 

業者D 950万円

と金額提示した時点で、この工事は業者Dとの契約になります。

これでは、せっかくの談合もパーですね。

 

こういった、「よこどり落札」の可能性がある限り、

わざわざ一度参加者全員が予定価格を超えた金額を提示することにメリットがありません。

 

ということで

a)官製談合である

というのは、可能性が低いです。

 

 

次に、

b)業者間のみの談合である

のケースについてはどうでしょうか。

 

こちらのケースにおいては、業者は発注者から情報を得られません。

このため、談合している業者たちは「よこどり落札」が起きないかひやひやものです。

 

「よこどり」の可能性も考え、ある程度低い価格で入札しないとリスクが大きいため、業者間のみの談合であるケースにおいては、どちらかといえば、全社予定価格内での入札となる可能性のほうが高いです。

 

 

 

ここまでで、談合があるケースについて考えてきましたが、

官製談合、業者間のみの談合どちらのケースにおいても

 

初回落札において、全員が予定価格超過である

ことが起こりにくいことがわかりました。記事の業者母集団は談合を行っている可能性が低い母集団といえます。

 

 

 

次に、談合がなかったケースについて考えてみましょう。

談合がない場合において

初回落札時に全員が予定価格超過であり、かつ記事のような状況(1位不動)が起こるというのはどのような状態なのでしょうか。

 

それは

予定価格が非常に低く設定されており、偶然赤字を出さずにできる業者が1社であった

 

というケースです。

地元のプラントとのつながりが強い業者が1社いてコンクリートを非常に安く仕入れられる(お得意様割引です。この可能性が高い)だとか、専売特許的な工法で工期が短縮可能だった

などなど、いろいろな場合が考えられます。

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グラフで一例をかくとこんな感じ。

A社のみ赤字ラインが予定価格を下回っているこのケースだと

2回目入札において100パーセントA社が1位となります。

 

また、BとCにおいては赤字ラインが同価格帯のため、順位が入れ替わるのは、業者の利益の考え方にもよりますが半々ではないでしょうか。

 

 

発注者側が見積もる予定価格は結構あいまいな部分も多く、こういったようにかなり低く算出されてしまっている工事もあります。

 

 

 

 

 

元論文は、そこまででもないですが

記事『統計が暴いた10年前の談合天国』

 

はかなり、誇張して書いてたので

こういう見方もあるんじゃない?と思って書きました。